体臭対策で気になるアイテムのひとつが石鹸ですよね。殺菌・消臭成分配合だったり、固形石鹸タイプやボディソープタイプ、いろいろあります。でもどれを選んだらいいのでしょうか?
そして、どうやって洗えば効果的に体臭を予防できるのでしょうか?体臭対策と石鹸、洗い方について考えてみましょう。
石鹸は紀元前3000年から存在して人間をきれいにしてきた、清潔の王様とも言えるアイテムです。石鹸は牛脂や植物性油など油分とアルカリ性の物質を反応させできたもので、その界面活性作用で水と油汚れをなじませ、汚れを洗い流す力を持っています。
ぶくぶくと泡立つのは、この界面活性作用が水の表面張力(水がまるく粒になる力ですね)を弱め、さらに泡を強化しているからなんですね。
体臭は汗に混じったニオイの原因物質が雑菌に分解されて発生するもの、あと皮脂汚れが酸化してニオイになったものの、大きく分けて2種類が多いと言われています。
そう考えると、普通の石鹸でも皮脂が酸化したタイプの体臭には効果的なことがわかりますね。さらに水でざぶざぶと洗い流す時に、ニオイの原因物質や菌も流してくれるので、石鹸は体臭の原因のほとんどに効果的と言えます。
「それで?普通の石鹸でも効果的だとして、体臭対策のために作られた石鹸とは何が違うの?」というのがまず疑問ですよね。普通の石鹸の洗浄効果にさらに殺菌・制汗・汚れ落ち成分を配合したのが体臭対策の石鹸です。
ニオイの原因物質を作り出してしまう雑菌をがっちり殺菌したり、原因の汗や皮脂汚れをより強く取り除くことでニオイをリセットしてくれます。ではどんな成分が体臭対策石鹸に配合されているのか見てみましょう。
この頼もしいニオイ対策成分、お風呂のたびに体臭を強烈にリセットしてくれるメリットがあります。ただ、使い続けることで体臭そのものが改善するのではなく、普通の石鹸と同じく原因をあくまで洗い流す補助的なものです。
そして石鹸、特にニオイ対策石鹸にはちょっとデメリットも存在するんです。
「体臭対策石鹸って菌も死ぬし、汗も抑えてくれるんだったらどんどん使いたいよね!」と思われるかもしれません。しかし、人間の皮膚にいるのは何もニオイの原因を作る悪い菌だけではないのです。
皮膚にいつも住んでいる菌のことを皮膚常在菌と言いますが、1種類だけではなくいろんな菌がひしめいているんですね。菌たちはお互いにバランスをとりあい生きています。
ちょうどいいバランスでいる間は毒になりませんが、バランスが崩れた時に菌はニオイやニキビなどの問題を起こし始めます。
殺菌のしすぎや洗いすぎなどで肌常在菌のバランスを崩してしまうことが、かえってニオイや肌トラブルにつながる場合もあるんです。まずは代表的な菌を見てみましょう。
特に黄色ブドウ球菌は毒性が強い菌で、感染すると食中毒や肺炎、あと怪我がジュクジュクになってしまう化膿の原因になる菌ですね。
「どうしよう!顔にそんな菌がついてるの?」と不安になりますが大丈夫、「感染」と「付着」は違いますし、善玉菌が多く菌のバランスが整った肌の上では、黄色ブドウ球菌もおとなしく、ただ肌の上にいるだけで悪さはしません。マラセチア菌やアクネ菌もそうです。
健康な皮膚では善玉菌の表皮ブドウ球菌がもっとも多く、毒性の強い菌は少ない状態がベストバランスと言われています。
表皮ブドウ球菌は皮膚の表面から深いところまで住んでいて、皮脂や汗をエサに、弱酸性の脂肪酸を作って皮膚面を保護してくれます。ほかの菌と違い、表皮ブドウ球菌の作る脂肪酸はよい香りなので、体臭の原因にはなりません。表皮ブドウ球菌が元気だということは、実は体臭対策でとっても大事なことなんですね。
ただ、あまり体臭対策成分が強烈な石鹸で体を洗い続けると、表皮ブドウ球菌が流された後に再び増えにくくなるリスクがあるんです。
まず石鹸で洗うと、皮脂は界面活性効果できれいに落とされてしまいます。そうなると肌の水分は蒸発して乾燥してしまうんです。肌表面の菌も、この時一緒に落とされます。
表皮ブドウ球菌はタフな菌なので、24時間ほどでまた増えて肌の表面に広がりますが、乾燥に弱い性質があるのでお肌の保湿が足りないと思うように増えてくれません。
そこに黄色ブドウ球菌などが増え、ニオイの原因物質を作り始めてしまうため「きれいに洗ったのに、なぜかクサイ!どうして!?」ということが起きてしまうんですね。
菌を落とせなかったからではなく、善玉菌を落としてしまい、復活できなかったためニオイが悪化してしまったのです。
表皮ブドウ球菌が落とされてから復活するまで24時間ということは「体を洗うのは1日1回がベスト」と言えますね。ニオイが気になるからと、1日に2回も3回も石鹸で洗うのは避けたほうがいいでしょう。
ここまで石鹸とは何か、肌表面にいる菌と体臭の関係について触れましたが、では具体的にどうやって体臭対策すればいいのでしょうか。石鹸選びと体の洗い方を考えてみましょう。
まずは良い石鹸を選ぶことから始めましょう。肌が乾燥しすぎない、善玉菌にとってベストな環境を作る石鹸がいいですね。
まず大切なのが、ボディーソープタイプは避けることです。ボディーソープタイプは強力な界面活性剤と泡立てるための成分で作られているため、肌へのダメージが大きく乾燥を招き、かえって体臭の原因になる可能性が高いのです。
できれば固形石鹸タイプを、洗浄成分がやさしいものを選びましょう。一見固形石鹸タイプでも、弱酸性や中性をうたったものがあります。石鹸はアルカリと油を反応させて作るものなので普通はアルカリ性です。弱酸性や中性のものは洗顔フォームに近いものと考え避けましょう。
理想は多少つっぱるくらいの洗い上がりでアルカリ性のものがいいでしょう。「え?つっぱるのって刺激が強そうじゃない?なんだか皮脂とかいろいろ持っていかれちゃった感じ・・・」と思われるかも知れませんが、実はつっぱりの正体は「皮脂がとれたから」ではないんです。
石鹸の成分はどんなに流しても、ある程度肌に残り皮膜を作ります。それがつっぱり感の原因なんですね。このつっぱりが皮脂を落とした後の肌を保護してくれるんです。
やがて肌の表皮ブドウ球菌が増え、肌をアルカリ性から弱酸性に戻してくれます。なので、弱酸性や中性の石鹸を選ぶ必要はないんですね。
殺菌成分などが含まれる体臭対策の石鹸を選ぶ場合、善玉菌への負担も考えて使う日と使わない日を設けるといいですね。人に会う日だけ体臭対策石鹸を使うなど、普通の石鹸と併用すると負担が少ないでしょう。
良い石鹸を選んだら、次は洗い方です。善玉菌が元気になる環境を残しながら清潔にする洗い方を心がけましょう。
ポイントは肌に負担をかけないこと・石鹸分をよく流すことです。悪玉菌はアルカリ性の環境でよく増える性質を持っています。石鹸はきれいに流して、悪玉菌が表皮ブドウ球菌が増えるのを邪魔しないようにしましょう。
あとは体の上のほうから順番にやさしく洗っていきます。あまり時間をかけると石鹸の成分が肌にダメージを与えるので、体を洗うのは5分以内に済ませたいですね。
石鹸はつけるだけでも皮脂を落とす効果がありますので、それほど皮脂線が多くない場所は擦ったりしなくても大丈夫です。皮脂線や汗の多い場所だけ、手か柔らかい布で優しく円を描くように洗うようにしましょう。
体を洗う布の素材は、綿・ガーゼ・海綿など、あたりの柔らかい素材を選ぶといいですね。シルクや麻は一見肌に優しそうですが繊維が強く、肌にダメージになる場合もあります。使う時は注意してそっと洗いましょう。ナイロンや硬いボディブラシは避けたほうがいいですね。
まとめると「選ぶなら石鹸・1日1回皮脂線の多い場所だけやさしく洗う」が体臭を防ぐ体の洗い方の重要ポイント2点ですね。殺菌・消臭効果のある石鹸を取り入れてもいいですが、石鹸でも十分な効果がありますよ。
また善玉菌にとって快適な潤った肌のため、お風呂上りに保湿クリームを塗るのも効果的ですね。セラミド入りのものが特に高い保湿効果がありオススメですよ。
「こすりすぎ・回数洗いすぎ・デオドラントの使いすぎ」に注意して、肌の善玉菌を生かすようにやさしくお手入れしましょう。